2月27日(火)卒業記念講演。卒業を目の前に控えた高校3年生に登壇してくださったのは加藤忠相さん。介護事業「あおいけあ」を運営なさっています。
「あおいけあ」が世界から注目される理由。それは”介護”を”世話をして護る”という枠で囲ったものではなく、利用者も働く人も「気遣いを持って心地よく過ごせる開放的な場所としている」ことです。ご紹介いただいたお写真には、認知症の方が草むしりをしたり、料理をしたり、カフェを運営したり、家事をしたりと、活き活きと働いていらっしゃる様子が映っていました。お若い時にプロとして活躍していたスキルを、他の方の役に立てている方もいらっしゃいました。やりたいことや得意なことに目を向けて過ごす楽しい時間。その体験が人を元気にし、人と人とをつないで互いに支え合う空間を作り上げるのだそうです。ときには認知症の方が地域の子供たちとのイベントを積極的に担うこともあるとのこと。高齢者の方々のみならず、働いている方、子育て世代の方や子供たち、携わっている多くの方々が互いを線引きすることなく笑顔で楽しんでいる姿が「あおいけあ」にはありました。
介護と聞くと、”厳しい””苦しい”といったイメージがあるかもしれません。しかし、元来「CARE」という言葉は「気にかける」を意味しているのだそうです。語源は「耕す」から来ているそうで、加藤さんは一方的に相手に何かをするのではなく、その人がその人らしく自立した生活がおくれるようにできればと考えていらっしゃいました。目の前の人に興味を持ち、どのような過去を過ごし、どのようなことを大切にしているのかを知っていく。より良い人間関係が「ケア」の本質に繋がると確信し、加藤さんは高齢者の方々と向き合い続けています。高齢化が進み人口減少が予測される日本では、これまで当たり前とされた概念が変化する可能性があります。多数派を「普通」と呼んでいても、認知症や高齢者の方が増えることで、これまで多数派だと思っていた人が少数派になるかもしれないのです。自分と違うバックグラウンドの方に対して排他的になるのではなく、互いに自然と支え合って生きていけたなら。未来を担う卒業生には、柔らかい頭で考えて社会を変えてもらいたいとメッセージをいただき、質疑応答や工藤校長との対談を経て、本日の講演は終了となりました。
あと数日後には卒業式をむかえ、それぞれの道へと巣立っていく高校3年生。加藤さんの言葉が、その背中を優しく押す力となることを願います。加藤さん、本日はありがとうございました。